令和3年度 第4号

〇初心                     校長   和田 孝 

 日本の舞台芸術で、世界無形文化財に指定されているものとして「能」があります。奈良・平安時代から人々に親しまれてきた曲や舞を、鎌倉時代を経て室町時代に「能」として大成させた人がいます。世阿弥です。彼は次の言葉を残しています。

初心忘るべからず。

この句、三ヶ条の口伝あり。

 是非初心忘るべからず。

 時々初心忘るべからず。

 老後初心忘るべからず。

この三つ、よくよく口伝すべし。

「初めの志を忘れてはならない。」という意味で使われていますが、世阿弥の伝えたいことはそうではありません。初心とは「若い頃の芸が未熟な状態や歳を経たそれぞれの段階の初めの芸が未熟な状態」のことです。「初心忘るべからず。」とは、人生の様々な段階で自分の未熟さを乗り越える自身の決意と努力を忘れないこと、ということです。

 生徒の皆さに当てはめると、入学・進学した時、入部した時、1学期が終了する本日、多くのことを乗り越えて来たことと思います。今日まで乗り越えてきた力を糧にして、現状に甘んじることなくより良い習慣が身に付くよう期待します。

 橙はみかんではありません。1年生はまだ緑色の橙です。2年生、3年生も2回目、3回目の緑色へ戻り、未完熟な橙です。明日からは実を熟す夏休みにしてください。

更新日:2021年07月20日 16:12:24